ニッケル水素電池(Ni-MH)の電極
ニッケル水素電池もニッケルカドミウム電池と同様に、正極板の活物質である水酸化ニッケルが、単独では極板として機能する形態を取れないため、通常は以下のような方法を用いて正極板が作られます。
焼結式
焼結式極板は、焼結により多孔度(孔の開いている率)75~80%の基板を作成し、この基板中に化学反応を利用して活物質を詰め込んだものです。
このタイプの極板は、伝導性が良く大電流での充放電に強いという特徴を持っています。
発泡メタル式
発泡メタル式極板は、多孔度が90~95%と非常に大きく、かつ孔の径が比較的大きな発泡状メタルを保持体として、この中に物理的方式で活物質を詰め込んだものです。
このタイプの極板は、活物質の量を多く詰められるため、高容量の蓄電池の製作に向いています。
上記の他に、負極板の項で説明する「ペースト式極板」などもニッケル水素電池の正極として用いられることがあります。
ニッケル水素電池の負極板
ニッケル水素電池の負極板の活物質は水素吸蔵合金の水素であり、極板の製法としては一般的に以下のペースト式が用いられています。
ペースト式
ペースト式極板は、水素吸蔵合金の微粉末に導電剤等の添加物を添加してペースト状とし、金属多孔板(パンチングメタル)に塗布後、プレスしたものです。
ペースト式極板の他に焼結式や発泡メタル式の極板がニッケル水素電池の負極板として用いられることもあります。
どのタイプの極板も、合金粉末や極板表面の表面改造技術により、充放電特性や寿命性能の改善を図っています。
水素吸蔵合金のしくみ
水素吸蔵合金は、熱、水素圧、電位によって水素の吸蔵、放出が可能な合金であり、その水素吸蔵密度は液体水素以上となり、合金の体積の1000倍以上の体積の水素を吸蔵することが可能です。
水素吸蔵合金の開発の歴史は意外に浅く、1960年代後半にアメリカとオランダで磁石材料の研究の中に偶然発見されたことがその始まりです。
もともと、ほとんどの金属元素は水素を吸蔵し、水素化物を形成する性質を持っており、金属中への水素の吸蔵放出は基本的には、加熱、冷却、あるいは水素圧力の増減で可能ですが、通常の金属では常温常圧付近での吸蔵放出は出来ません。
そこで水素を吸蔵しやすい金属(発熱型金属:A)と水素を吸蔵しにくい金属(吸蔵型金属:B)とを組み合わせ、適切な結合エネルギーにすることにより常温、常圧下での水素の吸蔵、放出を可能にしたものが水素吸蔵合金です。
ニッケル水素電池にはAB5型合金と呼ばれる水素吸蔵合金が使用されることが多く、これは発熱型金属Aと吸蔵型金属Bが1:5の組成で組み合わされたものです。
発熱型金属としては、中国との間で問題となったレアアース(希土類金属:La、Ce、Nd、Pr、Y)やミッシュメタル(希土類金属の混合物)が使用され、吸蔵型金属としてはニッケルにコバルトやアルミニウムなどを添加したものが使用されています。
水素吸蔵合金の重量当りの理論容量密度はニッカド電池の負極活物質である水酸化カドミウムとあまり変わりませんが、比重が水酸化カドミウムの二倍と大きいため、ニッケル水素電池の方がニカド電池よりも体積容量密度を大きくすることができます。